第4回 介護付有料老人ホームの職員配置

人員配置基準以上に配置するホームも多い

介護保険の特定施設入居者生活介護(特定施設)の指定を受けている有料老人ホームは介護付有料老人ホーム(以下、「介護付有料」)と分類されます。

介護付有料では、入居する要介護者3人に対して1人以上の介護職員の配置が義務づけられています。通称3対1基準と呼ばれるものです。重要事項説明書などに3対1、2.5対1、2対1、1,5対1という具合に0.5単位で表記されています。

介護付有料では、2.5対1以上の人員配置を標榜すると、手厚い介護体制をとっているとして、ホーム事業者は上乗せ介護費を入居者から徴収することが認められています。収入増になるので多くのホームが2.5対1以上の表示になっていると思いきや、実態は介護付有料の59%が3対1を標榜しています。

介護付有料の要介護者数と介護職員数について、介護サービス情報の公表制度の情報をもとに、配置実態を調査した結果、1.5対1以上は23%、1.5対1~2対1は43%、2対1~2.5対1は27%となり、介護付有料の9割以上が2.5対1以上の人員配置です。2.5対1~3対1は7%しかありませんでした。介護付有料の7割近くが2対1以上の手厚さで、介護職員を配置していることがわかりました。

標榜している数値に介護職員数が達していない場合、利用者に対して上乗せ介護費の返還を求められますので、介護職員の突然の退職や、雇用が思うように進まないケースなど一時的に数値が満たないことをホームは恐れる結果だと思われます。

介護職員を手厚く配置して介護サービスの充実を図るほど高い料金設定が可能となる点は、本誌5月号の当コーナーで触れたとおりです。3対1を標榜するホームでは、60ヵ月入居した時の平均月額費用は17万9000円であるのに対して、1.5対1以上のホームでは47万8000円と高い料金となっています。介護サービスが介護付有料の根幹となるサービスであることがうかがえます。

24時間看護師を配置するホームは入居費用も高額

病院での長期入院が困難となり、また、自宅にいる家族では対応が難しい胃ろう・IVH・人工呼吸・在宅酸素・たんの吸引などの医療サービスを介護付有料に求めるケースが増えています。

平成24年4月現在、介護サービス情報の公表システムに掲載されている介護付有料3049ヵ所のうち、「夜間看護体制加算」を取っているホームは1720ヵ所で、全体の56%を占めています。さらに、全体のおよそ1割に当たる291ヵ所が看護師を24時間配置しています。看護師を24時間配置しているホームの多くが都市部に集中しています。東京都の80ヵ所・神奈川県の47ヵ所が突出し、大阪府・兵庫県・福岡県・埼玉県・千葉県・愛知県が20~15ヵ所と続きます。

看護師を24時間配置するホームの45%が入居一時金1000万円以上の高額なホームとなっています。月額費用も全国平均の14万7000円に対して、月額21万円以上のホームが半数を占め、介護職員を手厚く配置するホームと同様に、24時間看護師を配置するホームは高額なホームとなっています。

ただ、必ずしも手厚い介護体制を敷くホームで、看護師を24時間配置しているとはかぎらず、3対1の配置を標榜するホームの約2割が24時間看護師の配置を行っています。

ブランド別にホームをみると、「アリア」16ヵ所、「サンシティ」12ヵ所、「ニチイホーム」8ヵ所、「まどか」、「くらら」、「ヒルデモア」が7ヵ所と続きます。「グランダ」の5ヵ所を加えると、㈱ベネッセスタイルケアの各ブランド(「アリア」、「まどか」、「くらら」、「グランダ」)の充実ぶりがうかがえます。ベネッセスタイルケアでは、24時間看護師常駐ホームに対して、従来のブランド名に「メディカルホーム」の名称を冠して区別しています。

また㈱チャーム・ケア・コーポレーションでも、従来の「チャーム」ブランドとは別に「チャームスイート」と称しています。 24時間の看護師配置をあえて選択しない「アライブ」や「ライフ&シニア」といったブランドもあります。

看護師の個々の力量に差があることや、夜間1人の看護師ができる範囲が限定的であることなどからオンコール体制にこだわるホームもあります。

このように介護付有料では介護・看護サービスが重視されているのです。

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