第2回 巨大地震と高齢者施設~ハードよりもソフトの充実を~

3月11日に巨大地震発生今後すべきことは何か

3月11日、マグニチュード9.0という巨大地震が、東北地方を中心に東日本全体を揺さぶりました。被害の全容がいつになったら判明するか見当のつかない未曾有の大地震と大津波でした。

避難後に家族と再会できたケースに感動する一方で、親族を探し続ける方の苦悩をみるにつけ、深い落胆を覚えるのは震災後のいつもの光景です。ただ、無縁社会といわれながらも、今回の巨大地震では被災者を支える地域のコミュニティが機能し、助け合い、いたわリ合う地域社会がまだしっかり残っていました。被災の残酷な映像の一方で、希薄になったといわれる人と人との繋がりや家族の絆の深さも見ることができ、ひとときほっとし、気持ちが和みました。

同じ場所にいながら、ちょっとした違いが生死を分けたケースが沢山あったと聞くにつけ、運、不運かと思いますが、災害の前になすべきことがあるのではないかと思います。

この被災によって、高齢者施設・住宅が防災・避難や建物の構造・建築などのハード基準強化に動くか、それとも地域のつながりやコミュニティのようなソフトづくりの強化に向かうのかが気にかかります。

被災者が多くなってしまったのは地震による建物倒壊ではなく、津波による被害が甚大だったからで、避難時間があまりにも短すぎたことに起因しています。巨大地震や大津波が予測不能だったかどうかはわかりませんが、今回の地震が想定を超える大きさだから起きた、やむを得ない被災ととらえるのではなく、短時間で避難できる適切な方法がなかったか、避難するのに適切な職員配置であったか、避難先での介護に滞リはなかったかなど、ソフト面での検証も十分になされるべきです。

鉄筋コンクリート造りのショッピングセンターや事務所ビル、病院など堅固な建物は中層建のため、最上階や屋上が避難場所として一部機能しましたが、強固な建物を造ることばかりに目が向いてはなりません。

一般的に高齢者施設は低層が多く、入所者は2階や3階に移動しても津波に飲み込まれるために、遠い別の場所への避難を迫られました。しかし、避難作業にあたる職員数には限リがあり、入所者全員の避難が無理な施設もあったようです。

 

地域との関わりを増やす取り組みが必要

平成23年度からは、サービス付き高齢者向け住宅制度が予算化されています。今回の巨大地震の教訓をもとに、高齢者住宅が取り組むべき課題はないでしようか。

地震や火災から逃れるため、いくら強固な建物を造っても限界があります。防災や避難設備を現状の基準より強化しても、このような災害にはさしたる意味をもたないことがわかりました。むしろ、家族や地域との連携をより一層深める取り組みが必要です。孤立・密室化した施設ではなくて、家族や地域の方たちがいつでも自由に訪れることができ、イベントヘの参加やボランティア活動のできるコミュニティの形成があれば、被災時の避難誘導に効果を発揮します。顔見知りの方たちが暮らす地域で、顔見知りの方たちによる支え合いがいかに心強く、安心して暮らし続けられるか、震災から教えられました。

これからの高齢者施設・住宅は家族や地域との関わりを重視し、訪問の頻度を増やす取り組みをしかけなければいけません。幼稚園児や小学校の児童から老人クラブの高齢者まで、地域に根ざし、地域の方たちとともに存在する高齢者の住まいの場が、本来の姿だったのだとあらためて思います。

介護保険で取り組もうとしている「地域包括ケア」は、まさにこの考え方です。安心して暮らすためにも、地域との関わりがとても大切なことだと教えられました。

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