第29回 田村明孝の辛口コラム~まだまだ足りない高齢者住宅・施設~

アンビス社長柴原慶一氏は、2014年にいずれも無届有料老人ホームの「医心館名張」(三重県名張市)・「医心館あま」(愛知県あま市)の2か所を開設して事業を開始する。
当時、入居者集めは今のようにはいかなかったようだが、ホスピスホームとして先行していた日本ホスピスホームに倣って、入居対象者を癌末期患者や難病患者に絞って、2018年頃から売り上げが急拡大していく。2019年東証JASDAQ市場に上場、2023年東証プライム市場に格上げとなり、上場から6年後の2025年決算予想では、売上高536億円と上場時の10倍に跳ね上がっている。
有料老人ホームは、創業から11年間で122か所に増え、特に上場からの6年間では、100か所も急増設している。有料老人ホーム開設をこのようなピッチで増やしている事業者は過去存在しない。

有料老人ホーム事業は、介護・看護職員の採用では人材不足の折から困難を極め、スタッフ教育が充実して安定した運営に結びつくには相応の時間がかかる。高い入居率を維持するための入居者募集の困難さや、イニシャルコストの回収に長期を要することなどから、事業収支は赤字に陥りやすい事業であることから、年間10棟の新規開設はまず不可能だ。

アンビスがこれを可能としたのは、不正や過剰請求を業務化常態化して、介護報酬と診療報酬の不正収入を繰り返すことで売上高を高め、高収益率が確保できるブラックのシステム化に成功したからだ。
退院患者の受け皿が常にほしい病院にとって、アンビスの存在は願ったり叶ったりで、お互い密接な関係を確立することができた。退院させられる癌末患者とその家族が行き場を探す混乱に付け込んで、明らかに赤字となる入居月額費用11.4万円と極端に低額な安さを前面に掲げ、入居者を増やしてきた。
挙句の果てには、生活保護受給者を癌末患者に仕立てた入居者までも集金の道具としていることが、6月24日共同通信の記事で明らかになった。
アンビスの進出により看護師が引き抜かれ、地域医療は成り立たない。

一方で、不正に得た医療・介護報酬が会社売上高を急増させ業績は右肩上がりで株主を喜ばせる。
これによって経済界での評価がますます高まり、柴原慶一氏は経済界から数々の賞を受賞、NewsPicksスタートアップ起業家「億万長者ランキング100」の1位にランキングされるまでになった。嘘偽りを土台としての虚像が見事に描かれている。

介護・医療を食い物にして、ここまでのし上がった良心面したモンスター振りは、コムスンの折口雅博の再来といったところだろうか。そろそろコムスンのようなお仕置きの鉄槌を下す時が来たといえる。

1974年中銀マンシオンに入社、分譲型高齢者ケア付きマンション「ライフケア」を3か所800戸の開発担当を経て退社。

1987年「タムラ企画」(現タムラプランニング&オペレーティング)を設立し代表に就任。高齢者住宅開設コンサル500件以上。開設ホーム30棟超。高齢者住宅・介護保険居宅サービス・エリアデータをデータベース化し販売。「高齢者の豊かな生活空間開発に向けて」研究会主宰。アライアンス加盟企業と2030年の未来型高齢者住宅モデルプランを作成し発表。2021年には「自立支援委員会」発足。テレビ・ラジオ出演や書籍出版多数。

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