第4回 田村明孝の辛口コラム~未来型高齢者住宅はエネルギー対策から

ガソリン価格や電気料金の上昇が続いている。エネルギー供給力を確保するため、岸田首相の「設置許可済み原発の再稼働」や「次世代型に原発の新設」に積極的発言が報道された。

エネルギーの創出は資源のない日本にとって永久課題の一つだが、福島第一原発の廃炉作業は困難を極め、東日本大震災の復旧も今だに終らないこの状況下で、原発再稼働議論はいささか早計に思えるが、日本のエネルギー不足はそこまで深刻な状況に追い込まれているということだ。

ロシアのウクライナ侵攻による食糧危機も深刻で、食品価格や飼料コストも高騰し世界的な物価高騰に繋がっている。 このような混沌とした情勢の中、高齢者住宅・施設にとってもこれらは避けて通れず、エネルギー対策を講じていかなければならない。

省エネ創エネの住宅・施設

今まで、高齢者住宅・施設では省エネ創エネの認識はほとんどなかった。

エネルギーの使用量を低く抑えるには断熱技術の導入が欠かせないのだが、外断熱の普及は全く進んでいない。

外皮(外壁・屋根・床下・窓・開口部)を断熱材で包み、窓は一枚ガラスサッシから二重三重の高気密サッシに変え、窓枠を熱伝導の低い樹脂系とすることで外気温によるエネルギー消費量は格段に抑えられる。

また、室内の空気を熱交換機で強制換気し、室温を一定に保つことでも省エネ効果はより高くなり、外気を取り込むことで感染症予防効果もある。もちろん電化製品はLEDなど消費電力量の低いものを活用する。

創エネは、自然エネルギーとして一般的になった屋根太陽光発電のほかに、太陽熱・風力・地熱の活用・ごみを圧縮再燃料化して焼却熱発電を行い、さらに新エネルギーとして有機廃棄物から発生するメタンガスをコージェネ装置の燃料として利用し、発電と温水を作る。さらに進化すれば藻からの発電や、カーボンニュートラルの発想から水素の利用も視野に入るだろう。 最終的には、高齢者住宅・施設内で消費するエネルギー相当量以上の電気と熱を作り出すシステムや設備を積極的に取り入れていかなければならない。

食材は地産地消

地域で採れた野菜や肉魚を地域の高齢者住宅・施設がまとまって購入するシステムの構築や、事前に献立を決めずに当日納入された食材でメニューを決めることができれば、入居者の楽しみも増え、家庭的な食事が提供できようになる。だが産地から距離の離れた都市部では、一概に導入は難しいかもしれないが、できる限り近いエリアから購入するなどで対応したい。

契約農家や漁協・農協・生協などとの連携を高めることで食材の安定供給を確保することができる。この結果、輸送コストの軽減にもつながる。 民間の有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の開発にあたり、省エネ創エネ対策を高齢者住宅から実践していく活動を始める時が来た。