- 2025/07/09
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- ホスピスホームの実態!
- 田村明孝の辛口コラム
愛知県名古屋市千種区、「ナゴヤドーム」の近くに、癌患者専用ホスピスとして高齢者専用賃貸住宅「ナーシングホームJAPAN」が2008年1月にオープンした。
鉄骨造4階建て、1階には建物のオーナーでもある在宅医療専門診療所「医療法人吉田クリニック」と、高専賃事業の運営者である訪問看護ステーション「有限会社ナースコール在宅センター訪問サービス」が開設されている。
2階から4階には高専賃の居室26室があり、各階にはリハビリ室・イベント室・食堂・浴室などの共用スペースが配置されている。居室面積は約18㎡で、トイレ洗面設備の他、医療用ベッドやテレビが設置され、まさに病院の個室のような居室となっている。
終末期医療が必要な人を入居対象としているので、入居期間は6カ月間としている。入居時には、入居一時金60万円、毎月の費用は、家賃・共益費・生活支援サービス料・食費で29万5千円。このほか医療費や介護サービスの自己負担分がかかる。
家族サポートとして、レスパイトケアを行っていて、1週間で約11万円。
利用日数は3日から1年と幅があるが、平均73日で、まさに癌末期患者の看取りの場となっている。
引用文献;株式会社法研発行「月刊介護保険」2011年7月号田村明孝の高齢者住宅レポート「第4回末期がんの利用者を看取るホスピス型高専賃~ナーシングホームJAPAN~
14年前の筆者のレポート記事だ。この時のメモには訪問看護1ベッド当たりの売り上げは60万円と記されている。
今日急増している緩和ケア(ホスピス)ホームの原型をここに見ることができる。
ナースコール社は看護師であり創業者である吉田豊美氏により2005年に設立され、訪問看護2か所、高専賃のちのサ付きを2か所運営し、2014年カイロス&カンパニー株式会社がM&Aで取得する。後にナースコール社とカイロス社は合併し、ファミリーホスピス株式会社となる。その持株会社の日本ホスピスホールディング株式会社(社長高橋正)は2019年3月に東証グロース市場に上場するほどの急成長を遂げる。
ナースコール社の買収で緩和ケア(ホスピス)ホームの足掛かりをつかんだ日本ホスピスは、54か所にさらに急拡大し、売上高を伸ばしていく。
この頃アンビス社は、2014年に第1号を開設しているが、高齢者住宅事業特有の収益計上の難しさに直面していた。先行する日本ホスピス社に倣って、癌末患者を入居者として取り込み、訪問看護の診療報酬で売り上げ増を図る経営戦略に転換する。
日本ホスピス社に遅れること6カ月、東証JASDAQ市場に上場を果たすが、その指南役として、日本ホスピス上場の証券幹事会社で同社を上場に導いた野村證券の関与が大きく影響を与えている。
一方の吉田豊美氏は、ナースコール社売却後の2014年から、医療型サ高住コンサルタントとして講演活動を開始、「1か月当たりのベッド単価が100万円以上、利益率が40%超え」と強烈なコピーで、高齢者住宅新聞などで事業参入セミナーを行っている。
2017年エムスリーナースサポート株式会社(現株式会社シーユーシー・ホスピス)の社長に就任、52か所の緩和ケア(ホスピス)ホームを開設してきた。
実質上の緩和ケア(ホスピス)ホームの水源地を辿ると吉田豊美氏に行きつく。
ちなみに、サンウェルズの苗代亮達氏は、2011年に造った住宅型有料老人ホーム「太陽のプリズム河原」の運営を軌道に乗せるため、吉田豊美氏に教えを請い、重い介護ではないが、訪問看護で高額な診療報酬を稼げるパーキンソン病患者をターゲットに絞って、入居させるシステムを考えだし、2018年に「PDハウス」ブランドで緩和ケア(ホスピス)ホーム事業を開始、2022年6月東証グロース市場に上場を果たす。現在46か所を運営している。運営内容の実態は、何回も書き続けてきたので、ここでは触れない。
緩和ケア(ホスピス)ホーム最大手の日本ホスピス、アンビス、サンウェルズ、シーユーシー・ホスピスいずれも、吉田豊美氏に辿り着く。まさに緩和ケア(ホスピス)ホーム発祥の源は吉田豊美氏ということになる。
筆者は同氏から、今年6月、「全社に向けて、今月にて退任の挨拶をさせていただきました。創立から8年を経て卒業させていただきます」との連絡を受け取った。

1974年中銀マンシオンに入社、分譲型高齢者ケア付きマンション「ライフケア」を3か所800戸の開発担当を経て退社。
1987年「タムラ企画」(現タムラプランニング&オペレーティング)を設立し代表に就任。高齢者住宅開設コンサル500件以上。開設ホーム30棟超。高齢者住宅・介護保険居宅サービス・エリアデータをデータベース化し販売。「高齢者の豊かな生活空間開発に向けて」研究会主宰。アライアンス加盟企業と2030年の未来型高齢者住宅モデルプランを作成し発表。2021年には「自立支援委員会」発足。テレビ・ラジオ出演や書籍出版多数。