- 2024/04/05
- 田村明孝の辛口コラム
高齢者を住まわせて介護や食事などのサービスを行う「有料老人ホーム」。バリアフリーで安否確認と生活相談が必須サービスの「サービス付き高齢者向け住宅」。地域内に住む高齢者が認知症の診断を条件に入居できる高齢者向け認知症対応型の「グループホーム」。
いずれも民間が行う高齢者住宅事業だが、サービスなど多くの部分がオーバーラップしていて、種類の線引きは紛らわしい。入居を前にその違いを理解していない人も多く、的確な選択は難しいことから、3種類を統一するべきだろう。
国が定める独り暮らしの居住最低面積は25㎡と定めているが「有料老人ホーム」13㎡・「グループホーム」7, 43㎡と居住最低面積には、足りていない。バリアフリーなどのハード要件にも相違がある。高齢者の住いの場として、居室面積25㎡ないしは18㎡でバリアフリー住宅をハード要件で「有料老人ホーム」・「サービス付き高齢者向け住宅」・「グループホーム」を「有料老人ホーム」に統一する。
そもそも「有料老人ホーム」という名称は、特別養護老人ホームや養護老人ホーム・経費老人ホームなどとともに昭和38年老人福祉法で規定されたものだ。この時代日本はまだ貧しく、貧困にあえぐ高齢者を行政処分の一環として措置するべくできた法律だ。「養護老人ホーム」と、さらに手厚い介護を提供する「特別養護老人ホーム」、といった対比名称である。「軽費老人ホーム」に対し、事業主体が民間で料金を徴収することから「有料老人ホーム」と決められたものと推察する。
筆者の提案は、「有料」を名称から外し、「老人」ではなく「高齢者」に、施設ではない住まいの場を印象付けるために「住宅」に変えて、「有料老人ホーム」の名称を「高齢者住宅」に変更するとすっきりする。
この「高齢者住宅」の名称を使用できる要件は、軽度から重度介護・認知症介護・終末介護を行うこととし、最期まで一貫した介護サービスを提供しないものは、これには該当しない。また、食事の提供は要件から外す。食事サービスを提供するから「有料老人ホーム」と判定されていたものは、以降「有料老人ホーム」ではなく、新名称「高齢者住宅」を名乗ることはできない。
現在類型は、介護保険の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた「介護付有料老人ホーム」、指定を受けていない「住宅型有料老人ホーム」、介護サービスを一切提供しない「健康型有料老人ホーム」の3つに区分している。
2000年介護保険施行に合わせて、特定施設の指定を受けているかいないかで区分したが、介護保険制度が国民に浸透した今日、この類型の意味はなくなっている。むしろ入居時の状態で類型を整理した方が分かりやすい。
入居時に自立なのか、入居時に要介護なのかを明確にするため、「入居時自立」・「入居時要介護」・「入居時自立・要介護」を「入居時自立」と「入居時要介護」の2パターンにする。
新たな名称と類型は以下とする。
① 「高齢者特別住宅」(入居時自立)25㎡以上 状態変化に対応できる高齢者住宅
② 「高齢者介護住宅」(入居時要介護)18㎡以上 要介護状態で入居して見取りまで一貫して介護を行う高齢者住宅
1974年中銀マンシオンに入社、分譲型高齢者ケア付きマンション「ライフケア」を3か所800戸の開発担当を経て退社。
1987年「タムラ企画」(現タムラプランニング&オペレーティング)を設立し代表に就任。高齢者住宅開設コンサル500件以上。開設ホーム30棟超。高齢者住宅・介護保険居宅サービス・エリアデータをデータベース化し販売。「高齢者の豊かな生活空間開発に向けて」研究会主宰。アライアンス加盟企業と2030年の未来型高齢者住宅モデルプランを作成し発表。2021年には「自立支援委員会」発足。テレビ・ラジオ出演や書籍出版多数。