第7回 田村明孝の辛口コラム~高齢者住宅・施設の統合を考える

日本全国の高齢者向け住宅・施設のデータベースづくりをしている弊社では、14種類に整理して供給数や所在などの基礎データから運営内容などの詳細を取りまとめている。
供給量の多い順から、特養65万床・有料老人ホーム(介護付・住宅型・無届)57万戸・老健37万床・サ付き28万戸・グループホーム22万戸・養護・軽費老人ホーム16万戸・療養病床・医療院5万床・分譲型ケア付きマンション2万戸で合計232万(戸床)が2022年10月現在供給されている。
この供給数は、介護者の介護なしでは生活できない要介護3以上認定者数237万人がほぼ全員入所入居できる数に相当する。65歳以上人口比6.5%で、重度要介護者や中重度認知症高齢者を対象としたスウェーデンの「高齢者特別住居」8~6%・デンマークの「プライエボーリ」6%と比べても見劣りしない供給数だ。
だが残念なことに日本の232万(戸床)の内訳は、自立者から重度要介護者を対象としたものまでその対象者の自立度の幅は広く、そこで提供されるサービスは介護に特化したものだけではない。

①介護保険施設サービス型及び居住系

入所入居してそのホーム内の介護職員から必要な介護サービスを必要なだけ受けられる介護に特化したホームは、特養・介護付き有料・老健・グループホーム・療養病床・その他の特定施設に限定され、合計数は160万戸床4.4%しかない。これらの高齢者住宅施設が237万戸床に供給を伸ばしていかなければならないのだが、77万戸床が不足している現状だ。 これらは様々な根拠法や制度の下に運営されており、整備費補助の有無・公的融資・法人税や固定資産税が非課税か否か・入所入居要件が要介護度3以上か要支援以上かなど異なっている。いずれも介護保険のもとで入居入所者に必要とされる介護サービスが提供されているのだが、介護報酬はまちまちで一物多価となっている。カテゴリーを統合すことで同じ土俵で勝負でき、良いサービスが生き残っていく場づくりが重要となる。

②外付け介護サービス高齢者住宅

住宅型有料や特定施設でないケアハウスやサ付きなどに入居している要介護高齢者は、介護サービスを受けるためには入居者に合ったケアプランを都度作成し、訪問や通所系介護サービスを個別に契約し介護サービスを受ける。現在54万戸1.5%が供給されている。ちなみにデンマークではこれに相当するエルダーボーリは6%が供給されているが、自治体によっては薬物中毒患者や癌末期患者、認知症配偶者と同居など多用途での利用が進み、必ずしも高齢者向け住居とは限らない。 このカテゴリーに入居し、要介護3を超え重度化した入居者はケアプランが限度額を超えるケースがほとんどで、超えた部分は全額自己負担となり、数万から数十万円の介護費を追加負担しなければならない。介護保険制度から見ると合理性に欠けたカテゴリーだといえる。

③自立高齢者向け住宅

自立者のみを入居条件とした高齢者住宅施設がある。有料・軽費・養護老人ホーム・サ付き・ケア付き分譲マンションなど18万戸0.5%だ。社会福祉施設の経費や養護老人ホームは、入所は行政措置として自治体が決定することとなる(ケアハウス除く)ため、民間の行う自立者向けとは異なる。民間の自立者向けは、それなりのニーズがあり、民間の創意工夫のもと供給が進み、民間デベロッパーの競争原理に委ねられ品質の良い高齢者住宅が数多くできることが望ましい。

カテゴリーの統合

スウェーデンでは、1992年エーデル改革で医療福祉の統廃合を行い、それまでの老人ホーム・老人病院・認知症グループリビング・虚弱高齢者向けサービスハウスを統合した上で、施設から住居に転換して「高齢者特別住居」として統合した。入居は必要度に応じて自治体が判断し、入居費用は家賃と生活費を区分して低所得者には年金額に応じて家賃補助や生活費補助を支給し、手元に数万円残る配慮された補助制度を作った。
医療は県の管轄、介護福祉は市の管轄と明確に区分し「高齢者特別住居」に住まい介護サービスを受ける合理的で無駄を省くことによる歳出削減の効果が上がっている。
日本でも同様のことができるはずだ。
①のカテゴリーの統廃合はスウェーデンを参考に変革できるだろう。
②については特定施設の指定を受けるようにし、①の統廃合に合流させることで、要介護者向け高齢者住宅の供給量が格段にアップする。
是非とも我々世代が生きている間に成し遂げていきたいものだと痛感する。