第2回 田村明孝の辛口コラム~自治体ごと施設・居宅系サービスの需給状況

~施設・居住系(介護保険3施設と特定施設・グループホーム)は
需要にこたえられているか~

入所入居すればその人に必要な介護サービスを必要なだけ提供する特養・老健・療養病床・介護院・グループホーム・特定施設の定員数(戸数)と、自宅に住んでいても夜間介護が必要となった時に介護サービスが提供される小規模多機能・看多機・24時間定期巡回・夜間介護サービスなどの地域密着型の定員数を加えた数値を供給量とした。 介助者のケアなくして一人での生活が困難な状態の要介護3~5の認定者数を需要数とし、自治体ごとにその差を供給過剰か供給不足か算定した。

2021年都道府県別でみると、不足上位は大阪府83千人分・東京都80千・愛知32千・千葉県と神奈川県30千・埼玉県25千と続き、最下位の鳥取県・島根県・佐賀県の1.8千となり、すべての都道府県で供給不足となる。

この不足を補っているのが、入居者平均要介護度2.5の住宅型有料老人ホームと2.0のサービス付き高齢者向け住宅だ。この2種類を供給量として加え換算すると、不足上位は東京都58千・大阪府22千・京都10千・千葉6千と不足数はぐっと低下し27府県となる。

一方、供給過剰の上位には北海道37千・福岡県20千・群馬県5千・佐賀県石川県4千と続き、20道府県が供給過剰となっている。
同様に政令市では、大阪市24千・名古屋市11千・横浜市1万をはじめ16市が供給不足、さいたま市など4市が供給過剰となっている。しかし、住宅型とサ付きを供給量に加算すると、供給不足は大阪市8千・京都市3千・堺市2千の7市となり、供給過剰は札幌市23千・福岡市7千・さいたま市6千の順で13市が供給過剰となっている。
同様に中核市では、供給不足は東大阪市5千・尼崎市大分市4千をはじめほぼすべての60市が供給不足に該当し、供給過剰は佐世保市など2市しかない。住宅型とサ付きを供給に加算すると、甲府市・秋田市・横須賀市・川越市1千戸の順で28の自治体の供給不足に対して、供給過剰は旭川市5千が突出して多く金沢市宮崎市3千・高崎市松山市函館市2千がそれに続き、34の自治体が供給過剰となっている。
東京23区では、住宅型とサ付きを加算しても、足立区の5千を筆頭に練馬区・大田区・江東区・江戸川区の順で、23区すべてが供給不足となっている。

前回、介護保険事業支援計画の整備量に対して第3期から第6期は毎期約5万戸が、第7期は約2万戸が積み残しだと記した。計画上必要とみなされていた施設・居住系の整備未達成が続いている。

全国的に見ると施設・居住系だけでは需要には応えられておらず、供給数は圧倒的不足状況となっている。住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅を供給量に加算すると一転供給過剰の自治体が大多数を占めていることから、施設・居住系の穴埋めをするに留まらず、住宅型とサ付きは必要量以上に、はるかに造りすぎとなっている。

札幌市・福岡市・旭川市・宮崎市のように突出して供給過剰となっている自治体では、介護保険財源の破綻や市外からの人口流入によって街づくりに様々な影響が出ている一方で、空室による経営悪化で事業者の倒産も増えている。悪質な事業者も紛れ込んでおり、市民にとってNGの存在となっているケースもある。 介護保険3施設・居住系の整備を介護保険事業計画通りに整備した上で、住宅型やサ付きを介護付に誘導するなどの行政の指導が必須状態となっている。