第3回 田村明孝の辛口コラム~要介護者向け施設は足りているか?

介護度3以上の重度要介護者の住まいはどこに

厚生労働省が定める要介護3とは、「自力で立ち上がることや歩くことが難しく、認知症の症状が見られる場合があるなど、食事や排泄など身の回りのことほぼ全てに介護が必要な状態」。

要介護4とは、「日常生活を一人で送ることが困難であり、認知機能の低下が見られる状態で、立ち上がる・歩くといった基本的な動作が難しく、自力で座っていることもできない状態」

要介護5とは、「要介護区分の中では最も重度な状態で、1日の大半を寝たきり状態で過ごし、ベッドの上で寝返りをする際にも介助が必要になってくる状態」 要介護3以上の重度要介護者になると、生活全般にわたり介護者の介護が必要となり、一人暮らしは全く困難となる。配偶者や兄弟姉妹子供などの同居者が介護にあたるケースも見受けられるが、典型的な老々介護や認々介護となり、自宅で継続して生活することは困難となる。

重度要介護者の生活の場の確保

2022年5月現在、要介護3以上の認定者数は239万人。 特養に60.4万人、老健に23.9万人、療養型医療施設に0.9万人、医療院に3.7万人、認知症対応グループホームに11.1万人、特定施設に12.1万人の合計112.1万人が介護保険施設・居住系に入所入居して、必要とされる介護サービスを受けて生活している。

残った127万人はどこで生活しているのだろうか?

定期巡回・随時対応型1.6万人、夜間対応型訪問介護0.4万人、小規模多機能4.3万人、看護師小規模多機能1万人の7.3万人が地域密着型介護サービスを利用している。

これらの要介護者は、施設居住系と同様に夜間の介護サービスが受けられるので、自宅での生活が継続できていると推察される。

居宅介護支援サービス(ケアマネによるケアプラン)受給者は98万人で、地域密着型サービスを利用せず、訪問系や通所系サービスをベースとして在宅で生活している重度介護者は90.7万人存在する。 一人暮らしで要介護度が3を超えると、生活を維持するためのケアプランは利用限度額をはるかに超えてしまい、自己負担が重くのしかかる。そのためにケアプランを削るケースも稀ではない。生活の質の悪化は否めない。

要介護3以上の239万人から、施設居住系入所入居者112.1万人と自宅でケアプランの基に介護サービス利用者98万人を除いた29万人は介護保険サービスそのものを受けていないことになる。このうち病院へ入院しているケースがどれくらいあるのかつかめないが、経済的困窮などの理由で介護サービスを受けずに生活している重度要介護者が相当数いるだろうと推測できる。

重度要介護者数相当の介護施設居住系の整備を

スウェーデン・デンマークでは、日本の要介護3以上に相当する重度認知症や重度要介護者向けの高齢者特別住居やプライエボーリは、行政の責任の下必要とする要介護者が入居できる法制度ができている。これら住居の供給量は65歳以上人口比で、スウェーデン約8%デンマーク約6%となっている。

日本の要介護3以上の65歳以上人口比は6.6%である。北欧並みといかないまでも介護保険施設・居住系は要介護3以上認定者数239万人分を目標に整備をしていくべきだ。

早急に住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の特定施設への誘導から手掛け、新たに介護付き有料老人ホームの増設の布石を打たなければならない。 重度要介護者が安心して生活できる場の確保と家賃補助などの制度創設を切に望む。