第37回 田村明孝の辛口コラム~日本全国1,570市区町村介護保険事業計画(施設・居住系)の需給状況を検証~約8割の1,245市区町村で不足、中重度対応が困難な住宅型とサ付きが穴埋めの図式~

2000年第1期介護保険事業計画が全国の自治体で策定され、65歳以上の高齢者から介護保険料の徴収が始まった。それから26年が経過した今を介護保険データから読み解いてみよう。

市区町村毎に介護計画を策定して市区町村毎に介護保険料を決める、住民の意向を汲み取りその地域に合った介護保険サービスが提供できる画期的な制度である。
介護計画の策定にあたって、中学校区単位で要介護者を把握し、そのニーズを施設サービス・居宅サービス(その後地域密着型サービスが加わる)に区分して取りまとめ、その見込み量に基づき介護保険料を算出する。

住民は他の市区町村の介護保険サービスの利用も可能。その際には住所地特例が適用され、費用は従前地の自治体が負担する。この仕組みによって子の呼び寄せや地縁血縁を求めて日本全国の施設・居住系への入居が可能となる。
ニーズ調査に基づいた見込み量をベースに介護保険事業計画が全国の市区町村で策定される。これが実現できれば、日本全国どこに住んでいても、介護の不安から解放され、安心した生活を送ることができる。

しかし残念ながら理想通りには進んでいない。
杜撰なニーズ調査・介護保険料を意図的に低く抑えることによる介護サービスの見込み量の未計上・中山間地や僻地など人口の少ないエリアの介護事業者ゼロ・計画値に見込まれてもその通りに開設されない施設・居住系等々、理想と遠くかけ離れた現実が介護保険開始以降次々と明らかになり、今日までそれが続いている。

高齢者住宅開設コンサルを業とする弊社では、第3期介護保険からデータ作りを開始し、全国都道府県の介護保険事業支援計画と、主要な都市の介護保険事業計画から、施設・居住系(介護保険3施設+特定施設+グループホーム+定期巡回等)の整備量・見込み量の計画値と実績値を捉え、要介護3以上の要介護者数を需要量として需給の状況を捉えてきた。
そして本年、介護保険事業計画の全国すべての市区町村のとりまとめが完了し、必要とされる高齢者施設・居住系が足りているのか否か、その需給状況をとりまとめた。

それによると、
1, 全国1570市区町村のうち約8割に当たる1245か所で、高齢者施設・住宅が不足。
2, 全国で約54万人分の高齢者施設・住宅が不足し、全国を11エリアに区分すると、首都圏エリア約16万人分、関西エリア約15万人分不足で、特に都市エリアでの不足が突出している。
3, この不足を補っているように見えるのが住宅型有料とサ付きで、それを供給数に加算すると全国集計で約12万人分が供給過多となる。しかしそれでも、首都圏エリアでは約4万人分、関西圏エリアでは約1万人分が不足。つまり、住宅型やサ付きでは中重度要介護への対応が困難であるにもかかわらず、実際にはこれらを選択せざるを得ないのが実態だ。
4, 1570市区町村の需給状況を4段階で評価。A評価(+-10%未満)400か所、+-B評価(+-30%未満)638か所、+-C評価(+-50%未満)311か所、+-D評価(+-50%以上)221か所に分類。需給バランのとれた+-0は静岡市。
(上記詳細を知りたい方は、当社データ「自治体別高齢者住宅・施設等の需給予測データ2026年度版」をご購読ください。

今国会で審議中の老人福祉法改正により届け出制が施行されることで、住宅型から介護付への誘導がより進むだろう。介護保険法では介護保険事業計画に住宅型とサ付きの供給量を反映させるよう求めていることなどから、高齢者施設・居住系の供給の変化とサービスの質の向上が図られる。需給状況のバランスを取りつつ中重度要介護者に相応しい質の高い高齢者施設・居住系の変革に期待したい。
団塊の世代が90歳を過ぎる2040年に向けて高齢者施設・居住系の不足状況を打開する一策となることを願っている。

1974年中銀マンシオンに入社、分譲型高齢者ケア付きマンション「ライフケア」を3か所800戸の開発担当を経て退社。

1987年「タムラ企画」(現タムラプランニング&オペレーティング)を設立し代表に就任。高齢者住宅開設コンサル500件以上。開設ホーム30棟超。高齢者住宅・介護保険居宅サービス・エリアデータをデータベース化し販売。「高齢者の豊かな生活空間開発に向けて」研究会主宰。アライアンス加盟企業と2030年の未来型高齢者住宅モデルプランを作成し発表。2021年には「自立支援委員会」発足。テレビ・ラジオ出演や書籍出版多数。

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