第38回 田村明孝の辛口コラム~診療報酬改定によって緩和ケア(ホスピス)ホームはどう変わる?~

令和8年度診療報酬改定が6月開始
緩和ケア(ホスピス)ホームを舞台とした、診療報酬の不正や過剰請求の実態が共同通信社などの報道で明らかになった。また中医協による訪問看護診療報酬が月額60万円台に集中してさらに高額帯が目立つなど、異常な訪問看護の診療報酬請求の実態も明らかになっている。
これを是正すべく、質の高い適正な訪問看護が実施されるよう診療報酬改定が6月行われた。訪問日数及び同一建物利用者数により診療報酬評価を細分化した内容となっている。訪問日数や利用者数が多くなるに従い報酬単価が低く抑えられている。
緩和ケア(ホスピス)ホームの訪問看護診療報酬が改定後いくらになるか、同一建物利用者数を10~19人との設定で試算した。各種加算もそれぞれ現実的ではないが、最大報酬を得られるものとして試算した。

訪問看護管理療養費
機能強化型1 月額報酬算定額 101,050円
月初日13,760円 月2日目以降 単一建物居住利用者が10~19人3,010円/日
訪問看護基本療養費 月額報酬算定額 81,800円
 看護師30分以上・同一建物利用者数10~19人20日目まで2,760円 21日目以降2,660円
 加算がない月額診療報酬は182,850円となる。
以降各種加算を試算
夜間早朝看護加算 46,500円
同一建物利用者数10~19人 月15日目まで1,800円 16日目以降1,300円
深夜訪問看護加算 93,000円
同一建物利用者数10~19人 月15日目まで3,900円 16日目以降2,300円
複数名訪問看護加算 13,600円
看護職員に看護師同行 週1日 同一建物利用者数10~19人 3,400円
上記条件による加算額 152,100円
上記加算の算定は別表7.8以外の利用者で、週2回以上の訪問看護は以下に述べる包括型となることから現実的にはあり得ないので除いて算出。
訪問看護基本療養費+各種加算額は334,950円となり、およそ30万円から35万円程度と予測される。

包括型訪問看護療養費の新設
今回の改定の最大のポイントは、包括型訪問看護療養費を新設したことだ。
対象となるのは別表第7・8、特別訪問看護指示書の出た患者で1日2回以上の訪問看護を行った場合、1日あたりの訪問時間及び単一建物に居住する利用者数に従い包括型訪問看護療養費を算定することとなる。
実施にあたっては24時間体制で、日中及び夜間帯にそれぞれ1回ずつ、1日の看護時間が60分以上である場合には1日あたり3回以上の訪問看護を行うことなど、厳しい算定要件が課されている。
単一建物居住利用者が20人未満の場合、訪問看護時間が90分以上の場合、1日14,010円
1カ月で420,300円の診療報酬となる。60分以上90分未満の場合11,010円1カ月で330,300円となる

改定前、複数人・複数回・夜間早朝・深夜などの訪問看護加算を行い、訪問看護診療報酬を請求して、月額目標を90万円と設定していたホームにとっては、診療報酬が約50%減となり、事業として立ち行かない事態に陥ることとなりそうだ。

緩和ケア(ホスピス)ホームのビジネスモデルの転換
月額家賃管理費の値上げ・従前0円や安価であった食費を一定額徴収・看護師の自主的退職推奨・職員の給与削減等々その対策は、各社講じているようだが緩和ケア(ホスピス)ホーム事業業界にとって、この事態をどのように乗り越えていくのか注視している。

一般的な診療報酬を得てきた事業者にとっても、おおむね診療報酬は6月以前と比べると約20%減になると試算している。
日本ホスピス社は、診療報酬の減収を埋めるため、既存入居者に対して8月より月額家賃・管理費を5万円値上げすることとした。同業他社の月額費用のダンピングによって値下げせざるを得ない状況を元の価格に戻すこととしたと経営者は話す。業界リーダーとして業界正常化に向けていち早く対応したが、入居者・家族・ケアマネをはじめとして値上げに対する強固な反対にあっているのが実情のようだ。この値上げ苦情が行政に集中していると聞いている。
入居者には年金生活者など値上げに応じられない様々な事情がある。一方で事業者にとっても正当な料金に戻さなければ赤字経営になる危機に晒されている。
行政は今までの緩和ケア(ホスピス)ホームがいかに歪な事業であったか、診療報酬や介護保険法・老人福祉法の改定が何を起因として行われたのか、その問題点を十分に理解した上で行政指導を行い、値上げ事業者が一方的に悪者扱いされることのないよう願っている。
緩和ケア(ホスピス)ホームの社会的存続は認めつつ、訪問看護診療報酬を事業収入の中枢にすえるビジネスモデルが如何に危ういものだったか、今回の改正を機に正常な状態を取り戻し、緩和ケア(ホスピス)ホーム事業の健全な発展を期待している。

1974年中銀マンシオンに入社、分譲型高齢者ケア付きマンション「ライフケア」を3か所800戸の開発担当を経て退社。

1987年「タムラ企画」(現タムラプランニング&オペレーティング)を設立し代表に就任。高齢者住宅開設コンサル500件以上。開設ホーム30棟超。高齢者住宅・介護保険居宅サービス・エリアデータをデータベース化し販売。「高齢者の豊かな生活空間開発に向けて」研究会主宰。アライアンス加盟企業と2030年の未来型高齢者住宅モデルプランを作成し発表。2021年には「自立支援委員会」発足。テレビ・ラジオ出演や書籍出版多数。

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